感謝メガネ

「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【⑦500年越しの恩返し】

美里出版

幸せは、探すものではなく、気づくものでした

SNSや口コミで感動が広がっている『人生は感謝するほどうまくいく』。
本編から生まれた、もうひとつのスピンオフストーリーが本作です。

「心の視界」がクリアに変わる感謝の魔法を、岡村佳明さんが全8回でお届けします。

さあ、あなたも「感謝メガネ」をかけてみませんか?

[連載第7回]

第1回はコチラ
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【①ホヌとの出会い】
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【①ホヌとの出会い】
第2回はコチラ
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【②灰色のため息】
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【②灰色のため息】
第3回はコチラ
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【③脳のゴールデンタイム】
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【③脳のゴールデンタイム】
第4回はコチラ
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【④心のレンズ】
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【④心のレンズ】
第5回はコチラ
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【⑤不思議な玉手箱】
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【⑤不思議な玉手箱】
第6回はコチラ
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【⑥ゆりこ】
「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【⑥ゆりこ】

第7回/全8回

感謝メガネ ー幸せはすぐそこにあるー

7 500年越しの恩返し

それから1週間後のことだ。
仕事から帰宅すると、小包が届いていた。
差し出し人は「竜宮堂」とある。

「竜宮堂」……、どこかで聞いたことがあるような名前だ。
品名の欄にははっきりこう書かれていた。「玉手箱」。

「竜宮堂、竜宮城、玉手箱……」

(えっ、どういうこと?)
修司はわけがわからなくなって、思考がフリーズした。

「あれは……、夢じゃなかったのか?」

そうつぶやいた瞬間、あの時のホヌの声が鮮やかによみがえった。

「この玉手箱は『ツイてない』『運がない』、そう思ったときしか開けないでくださいね。約束ですよ」

梱包を開けようとした修司の手が止まった。
箱を開けるには、ちょっとした勇気が必要だった。

両手の平に収まるサイズの箱は、軽かった。
振ってみても、中で物が動く気配はない。
下からのぞいてみたりもしたが、怪しいところも見当たらない。
修司は「はぁ」とため息をつきながら、箱を机に置いた。

「……ダメだ、ひとりじゃ開けられそうにないな」

修司は混乱したままスマホを手に取り、ゆりこの電話番号を急いで押した。
2、3回の呼び出し音の後、聞き慣れた明るい声が耳に届く。

「もしもし修司、すごい! 夢が正夢になったのね、何が入っているのかな」

修司がいきさつを話すと、彼女は「うふふ」と笑って、ちょっと楽しそうにこう言った。

「最近の修司は元気がないから、開けていいかもよ? 煙が出てきておじいちゃんになっちゃったりしてね、あははは」

電話越しのゆりこの声は、笑顔だった。

「開けてみるから、ちょっと待ってて」

修司はこう言うと、ごくりとつばを飲み込むと、ゆっくりフタを開けてみた。
おとぎ話のように中から煙が出てくることはなかった。けれど確かに、潮のような香りがフワフワと漂い出てきた。

フタを開けると、乾燥した柔らかな海藻がクッション代わりに詰められていた。
修司がそれらをどけると、波紋のような模様が入った真っ白な薄紙が現れた。
その中には、何かがていねいに包まれている。

薄紙をゆっくり開く。
中から出てきたのは、一通の手紙と「玉手箱」と書かれた細長い小箱だった。

封筒の表には、「浦島修司様へ」と見事な毛筆で書かれている。
封を開けると、長い一枚の巻紙を幾重にも折りたたんだ手紙が入っていた。
キラキラと光る粉を織り込んだような風合いある紙に、温かみのある悠々とした文字が並んでいる。
その文字を見ているだけで、心が癒されていくようだった。

浦島修司様へ

修司様がこの玉手箱を開けてこの手紙を読んでいるということは、さぞ何か「ツイてない」ことでもあったと思います。 

けれども、もう安心してください。
修司様には、この「幸せの感謝メガネ」がついています!
これからの修司様の未来には、幸せかハッピーしかないのです。
どんなことが起こっても、幸せかハッピーにしかなれないのです。

もう500年近く前のことになりますでしょうか、私は、あなたのおじいちゃんのおじいちゃんの、そのまたずっとさかのぼったご先祖様に、大変お世話になったのです。

忘れもしません。
あれは、私がまだ幼少の頃でした。
竜宮城から浜辺に遊びに来たんです。
ちょっと遠出してみたいという、私なりの大冒険でした。

その当時の人間の世はまさに戦国時代、当時の子どもたちは石を投げ合ったり、木の枝を振り回したり、かなり過激な遊びをしていたものです。
きっと、合戦に向けた訓練にもなっていたのでしょう。

そういうこともあったからか、毎日毎日、子どもたちのいじめのターゲットになっていた私。
「生きていくのがつらい」と毎日、沈み込んでいました。

あなたのおじいちゃんのおじいちゃんの……、少しややっこしいですね。
あなたのご先祖様である浦島太郎さんが、いじめられている私を助けてくれたのです。
それで私は無事に、竜宮城に帰ることができました。

太郎さんに助けていただいたお話を父にしたところ、「お礼に」と、太郎さんを竜宮城にお招きすることになりました。
竜宮城にいらした太郎さんは大変喜んでくださり、それはそれは毎日楽しんでおられました。

月日は流れ、ついに、太郎さんが地上に帰る日がやってきました。
その時、お土産に玉手箱をお渡ししたのです。

乙姫様が「すぐに開けてはいけませんよ」と言ったのに、太郎さんはすぐに開けてしまったそうです。

そして中から出てきたのは、「煙」。
その煙で太郎さんはおじいちゃんになってしまいました。
それからすぐに亡くなったと聞いてます。

今思うと、私たちの渡し方が悪かったのかもしれません。
お土産をもらえば「なんだろう」とワクワクして、すぐ開けたくなるのはあたり前のことだと思うのです。
太郎さんには、全くツミはありません。

私はこの話を聞いて、恩をあだで返したような気持ちになり、長年モヤモヤしてなりませんでした。

そんな時です。
竜宮城の図書室で一冊の本に吸い寄せられるように目がとまったのです。
背表紙には『10人の法則』――西田文郎著とありました。

ページをめくると、思わずドキッとすることが書かれていたんです。
「あなたが感謝すべき人、10人の名前をあげなさい。そして1年以内に、10人全員にあなたの『感謝』を伝えなさい」と。

その時、まっさきにお顔が浮かんだのが、浦島太郎さんでした。
しかし太郎さんは、もうこの世にはいらっしゃいません。
ならばせめて、太郎さんのご子孫様に、この私の切なる気持ちを伝えたいと思ったのです。

そんなある日、地上の砂浜で寄せては返す波を眺めながら、甲羅干しをしていたときのことです。
サーフィンで波待ちしている修司様をお見かけしたのです。
後ろ姿を見ただけで、私にはすぐにわかりました。この方が太郎さんのご子孫様なのだと。

けれどカメの私が話しかけたら、修司様をさぞかし驚かせてしまうのではないか。そう思うと、私はどうしても声をかけることができなかったのです。

想いを伝えることが、これほどまでに勇気のいることだとは。
けれど、「こんな奇跡のような出会いを今ここで逃してしまったら、もう2度と会えない」。私の心の声が、はっきりと聞こえたのです。

それで私は考えました。「夢の中ならなんでもあり!」と。
われながら、いいアイデアでした。
それで早速、修司様の夢に登場させていただくことにしたのです。

さあ、本題はこれからです。
修司様はサーフィンが大好きですよね。
そして、大のサングラス好きでもある。

そんな修司様に、この玉手箱の中に、心ばかりのプレゼントを用意させていただきました。
それは「メガネ」です。
どうか安心して、この玉手箱を開けてください。
昔話のような煙は、決して出てきませんから。

このメガネは、私の家に代々伝わる「幸せの感謝メガネ」といいます。
私たち一族が、ずっと大切に守り続けてきたものです。

かつての浦島太郎さんに「おわび」と「感謝」を届けたい――。父と相談して、この家宝を修司様へお贈りすることに決めました。

竜宮城に住む私たちは、このメガネのおかげで長年幸せな暮らしを続けてきました。

このメガネをかけて「ものごと」を見ると、すべてが「ありがたく」見えるのです。
それまであたり前だったことも、まったく違って見えてくるのです。

きっと、修司様は気に入ってくれると思います。
このメガネで修司様がさらなる幸せに満たされることを心より祈っています。
乙姫様、竜宮城の魚たち、そうしてウミガメ家一同、心よりの祈りを込めて。

〈追伸〉

乙姫様がこう教えてくれました。

幸せの感謝メガネ」は竜宮城に住む者だけでなく、実は人間も、必ずひとつは親から受け継いで持っている」ということなのです。
ただ残念なことに、人間にはそれが知られていないので、使い方もわからない人がほとんどなのだそうです。

ですが、地上で出版されている『人生は感謝するほどうまくいく』という本を読むと、『感謝メガネの使い方』がていねいに記されているのだとか。

竜宮城に住む者たちだけでなく、地上に住むたくさんの人たちが、「感謝メガネ」で幸せになることを、私は海の底からずっと祈っています。

修司様 心より感謝しています。 

合掌  ホヌより

修司は巻紙をくるくるとめくりながら、一気に読み終えた。

夢だと思っていた竜宮城。
そして今、修司の手にあるのは、ホヌからの手紙……。
これは、夢じゃない。現実だ。
果たして、こんな奇跡のようなことがあるんだろうか?

「……五百年前の俺の先祖が、あの浦島太郎なのか?」
修司は「浦島太郎」とスマホで検索してみた。

浦島伝説は「日本書紀」にも記されているそうだ。
となると、1000年以上も前の話になる……。
ホヌが書いている時代とは、ちょっとズレる。

(……でも、これは、俺の家の浦島太郎伝説なんだ)
こう修司は思った。

そうして修司は、ひとつ息を吐き出すと、静かに「玉手箱」と書かれた小箱のフタを持ち上げた。
中から現れたのは、深い琥珀色の輝きを放つ、べっ甲のような見事なメガネだった。

手に取ると、びっくりするほど滑らかで、肌になじむような温かみがある。
透明感のあるツヤがあり、角度を変えるたびに、フレームに埋め込まれた真珠や貝殻のような細かな粉がキラキラと光った。
見ていると、竜宮城の美しさがよみがえる。

「……なんてキレイなんだ」

思わず、ひとり言が漏れる。

修司はドキドキしながら、そのメガネをかけてみた。
鏡の前にダッシュする。

「おおお~! カッコいいじゃないか!」

それに、このメガネをかけると、自分が数段カッコよく、誇らしい人間に見えるような気がした。
さらに驚いたことには、サイズだけでなく、度数までもがあつらえたようにジャストフィットしていた。

修司は心のスイッチが「カチリ」と切り替わったような気がした。

その日から、修司は感謝メガネをかけて過ごすことにした。

すると、周りの反応が劇的に変わり始めたのだ。
「カッコいいメガネだね!」「そのメガネ、めちゃ似合ってる」「どこで買えるの?」と、行く先々で声をかけられる。まんざらでもない気分だ。

台所で料理をしていた母も、メガネをかけた修司を見ると、ピタリと手を止めて「そのメガネ、すごくいいじゃない! あんたに似合ってるわよ。」と喜んでくれた。
そして最愛のゆりこが「めちゃかっこいい! 世界一似合ってるよ」とはしゃいでくれたことが、修司にはたまらなくうれしかった。

「人からちゃんと見てもらえるって、こんなにうれしいもんなんだな」と、修司は改めて思った。

鏡の中のメガネ姿の自分を見つめていると、「感謝」の気持ちが、静かに、そして力強くわき上がってくる。

「ありがとう」

その言葉が、自然と口に出ていた。
フレームが、一瞬キラリと光ったような気がした。

そうして、1カ月がたった。

メガネの使い方が書かれている『人生は感謝するほどうまくいく』は、もはや修司のバイブルになったといっていい。何十回も繰り返し読んで、フセンだらけだ。重要なところのあちらこちらには、マーカーが引いてある。

特に、本の中で感謝力を高めるワークとして紹介されている「寝る前に今日あったいい出来事を3つ書き出す」は、修司の欠かせないルーティンになっていた。

今日あったいい出来事を3つ書き出してごらん。
そして、この3つを考えながら寝るといい。
毎日、半年間続けてごらん。
間違いなく、あんたの人生は変わってくるよ。

『人生は感謝するほどうまくいく』

これは、作者がお母さんから贈られた言葉だという。

いいことがあった日だけでなく、どんなに調子の悪い日でも、書くことが思いつかない夜でも、いい出来事を3つ書き出すのだ。

だがいざ始めてみると、最初は戸惑うことばかりだった。
まず、何を書いていいのかわからない。

ドラマチックな「いい出来事」が、そうそう毎日、起こるものでもない。
書くことが思いつかない夜は、なかば強引に「今日も朝、目が覚めた」「朝食のみそ汁がおいしかった」「今日も、元気に過ごせた」など、なんでもいいから書いてみた。

あたり前のことを書き続けた。
2日め、3日め、1週間、10日と続けたある日、修司は気づいたのだ。

何気なく過ごしている毎日は、何もいい出来事が起きていないような日々の積み重ね。
この毎日の「あたり前」こそが「いいこと」なんだ、「幸せ」なんだ。

心の底から、こう、実感できたのだ。

上司の浅野さんに厳しいことを言われても、
「いつも多くの気づきを与えていただき、ありがとうございます! 感謝!」
そう心から言えるようになっていた。

自分の不注意で車をこすってしまっても、
「この程度で済んでよかった! 感謝!」
「廃車にならなくてよかった! 感謝!」

財布を落としてしまったときでさえ、
「中に入っていた金額が少なくてよかった! 感謝!」
「これからはもっと気をつけよう! 気づかせてくれて、感謝!」

たとえケガしても、
「これくらいですんでよかった! 感謝!」
「天が与えてくれた休息の時間に本を読もう! 感謝!」

自分に起こる全てのことが「ありがたい」と思えるようになっていた。

そうして、周囲の人たちにかける言葉にも、自然と温かな感謝の言葉があふれるようになっていた。

気づけばいつのまにか、修司の人生は、どんどん良い方向に回り始めていた。

Yoshiaki Okamura 2026

【第8回「玉手箱に秘められた愛」に続く】

【著者紹介】

岡村佳明(おかむら・よしあき)

「岡むら浪漫」グループ創業者
「浪漫岡村塾」塾長
JADA(日本能力開発分析)協会認定 SBT1級メンタルコーチ
JADA(日本能力開発分析)協会認定 SBTアスリートメンタルコーチ
小説家

1962(昭和37)年生まれ。
生まれも育ちも静岡県藤枝市。

母親が73年前(出版時)に始めた居酒屋を「稼業なら自由に遊べる」という不純な動機で手伝うことから、居酒屋の道に入る。

35歳でそれまで遊び回っていた生活から一念発起し、「居酒屋づくりは人づくり」「お腹だけでなく心も満腹にさせる店」を合言葉に、「看板を出さない・宣伝をしない・入口がわからない」をコンセプトとして口コミだけで繁盛店をつくり上げる。
お客さま本位のスタッフ育成に力を注ぎ、「岡むら浪漫は人間道場」といわれるようになる。
独自の経営がメディアでも注目を浴び、全国で講演などを行う。

現在も、静岡を中心に、沖縄、インドネシアのバリ島などで居酒屋経営に携わりつつ、60歳からは、それまでの「居酒屋から周りを元気に」から「岡村佳明から周りを元気に」、「日本を元気に」に主軸を移し、活動の幅を広げている。

著書に『人生は感謝するほどうまくいく』(美里出版)、『看板のない居酒屋』『マンガ 看板のない居酒屋[成長物語]』(みやたけし漫画)(ともに現代書林)がある。

◎岡村佳明 公式サイト https://okamura-school.com/

◎ポッドキャスト「看板のない居酒屋 ~繁盛店作りは人作り~岡村佳明」はapple Podcasts、Spotify、Amazon Musicのプラットフォームで視聴いただけます。

物語のベースとなった話題の電子書籍『人生は感謝するほどうまくいく』(岡村佳明著/美里出版)。
本編とあわせて読むと、より深く「感謝の魔法」を体感いただけます。

\すべての奇跡は感謝から始まる!/
『人生は感謝するほどうまくいく』岡村佳明・著
『人生は感謝するほどうまくいく』岡村佳明・著
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この記事の作成者
美里出版 編集部
美里出版 編集部
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