「感謝メガネ ― 幸せはすぐそこにある」岡村佳明著【⑤不思議な玉手箱】
幸せは、探すものではなく、気づくものでした
SNSや口コミで感動が広がっている『人生は感謝するほどうまくいく』。
本編から生まれた、もうひとつのスピンオフストーリーが本作です。
「心の視界」がクリアに変わる感謝の魔法を、岡村佳明さんが全8回でお届けします。
さあ、あなたも「感謝メガネ」をかけてみませんか?
[連載第5回]




第5回/全8回
『感謝メガネ ー幸せはすぐそこにあるー』
5 不思議な玉手箱
「ひとつ、質問していいかな?」
「なんでも聞いてください!」
「君たちの足は10本あるよね?」
「見ての通りでございます」
「じつは足が8本で2本が手っていうのはホントの話?」
俺はホテルのレストランで働いている。
料理人から「イカは頭を叩くとイテッと2本が動くんだよ。それが手なんだぜ」と聞いたことがあった。
「本当です。足は8本、少し長いコレとコレが手なんです。ほら、こうやって泳いでいる小魚とかを捕まえるんですぜ」
イカは2本の手をバネのようにチャッと伸ばして、自慢げに修司に見せた。
「なるほど!すごいな」
修司の驚きとほめ言葉に、イカたちは満足げに10本の手足をヒラヒラさせた。
体をピカピカ光らせて、くねくねと互いにタッチしあう様子は、うれしさを隠し切れないようだった。
おもてなしを心から喜んでくれるお客さんと、同じような表情にも見えた。
イカがこんなに感情豊かだなんて、修司は想像したこともなかった。
なんだか、いいコミュニケーションがとれているような気もする。
「修司さま、お待ちどうさまです。さあ、まいりましょう」
ホヌの声だ。
「修司さま、竜宮城にご満足いただけたでしょうか?」
どうやら俺は、地上に帰るらしい。
「すごく楽しかったよ!」
こう言いながら修司は思った。
(まだ竜宮城にいたいのに)
(まだ乙姫様とゆっくり飲みたいのに)
「乙姫様が寂しがっていました」
とホヌは言った。
(乙姫、俺も寂しい。帰りたくない。まだ、竜宮城にいたい。この心地よい世界に浸っていたいよ)
「修司さま、竜宮城においでくださり本当にありがとうございました。お礼にこの玉手箱をお受け取りください」
どこかで聞いたことのあるセリフだ。
乙姫様とホヌからのお土産らしい。
「ただしひとつだけ、約束してください。
この玉手箱は『ツイてない』『運がない』、そう思ったときだけ、開けてくださいね。
それ以外では、絶対に開けないでください」
修司はちょっと不思議に思ったが、軽くうなずいた。
それからホヌの甲羅に乗り、透き通った海の中を地上に向かった。
色とりどりの魚たちが、ユラユラと身を揺らしながら見送ってくれている。
その中には、あの3匹のイカたちもいる。
修司は、何度も何度も後ろを振り返った。
竜宮城のきらめきが、遠ざかって小さくなっていく。
「この幻想的な景色を、俺は生涯、忘れることはないだろう。
ホヌ、乙姫様、本当にありがとう」
修司はホヌの背中で、いつの間にか、吸い込まれるように深い眠りに落ちていた。
夕方の湘南海岸は、少し風が出てきた。
修司は肌寒さで目が覚めた。
(俺は、また夢の続きを見ていたんだな!)
(それにしても、なんとも不思議な感じだった)
江の島の向こうに、燃えるような赤い夕陽が沈もうとしていた。
「また、すてきな夢を見せてくれてありがとう」
修司はそうつぶやくと、夕陽に向かって静かに手を合わせた。
Yoshiaki Okamura 2026
【第6回「ゆりこ」に続く】
【著者紹介】
岡村佳明(おかむら・よしあき)
「岡むら浪漫」グループ創業者
「浪漫岡村塾」塾長
JADA(日本能力開発分析)協会認定 SBT1級メンタルコーチ
JADA(日本能力開発分析)協会認定 SBTアスリートメンタルコーチ
小説家
1962(昭和37)年生まれ。
生まれも育ちも静岡県藤枝市。
母親が73年前(出版時)に始めた居酒屋を「稼業なら自由に遊べる」という不純な動機で手伝うことから、居酒屋の道に入る。
35歳でそれまで遊び回っていた生活から一念発起し、「居酒屋づくりは人づくり」「お腹だけでなく心も満腹にさせる店」を合言葉に、「看板を出さない・宣伝をしない・入口がわからない」をコンセプトとして口コミだけで繁盛店をつくり上げる。
お客さま本位のスタッフ育成に力を注ぎ、「岡むら浪漫は人間道場」といわれるようになる。
独自の経営がメディアでも注目を浴び、全国で講演などを行う。
現在も、静岡を中心に、沖縄、インドネシアのバリ島などで居酒屋経営に携わりつつ、60歳からは、それまでの「居酒屋から周りを元気に」から「岡村佳明から周りを元気に」、「日本を元気に」に主軸を移し、活動の幅を広げている。
著書に『人生は感謝するほどうまくいく』(美里出版)、『看板のない居酒屋』『マンガ 看板のない居酒屋[成長物語]』(みやたけし漫画)(ともに現代書林)がある。
◎岡村佳明 公式サイト https://okamura-school.com/
◎ポッドキャスト「看板のない居酒屋 ~繁盛店作りは人作り~岡村佳明」はapple Podcasts、Spotify、Amazon Musicのプラットフォームで視聴いただけます。

